「この世界の片隅に」は2016年に長編アニメーションとして公開されました。
さらに3年後の2019年に「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が公開されています。
これは、前作で登場した遊郭で働く白木リンと、すずが心を通わせていくシーンが詳しく描かれているので、登場人物がさらに身近に愛おしく感じられるんですね。
また、この映画があまりにも当時の様子を克明に描写しているので、実話ではないかという声が多くあったそうです。
この記事では、この世界の片隅にのあらすじとキャラと声優、原作と実話のこと、呉の町のことを紹介しています。
ぜひ、映画を見たら、原作漫画にも触れて見てほしいそんな作品です。
この世界の片隅にのアニメ映画のあらすじ
日常の中に戦争がある
主人公北条すずが、広島県の江波から呉へ、お嫁に行きます。
すずは、おっとりした女の子で、広島で生まれ育って、18歳で同じ広島県の呉市にお嫁に行くのです。
そんな呉でのすずの日常は、淡々と進んでいきますが、時代は太平洋戦争の真っ只中です。
暮らしの中にも、次第に戦争の影が色濃くなります。
呉は軍港があり、日本の重要な軍事拠点です。そういったことで人々の暮らしは、戦争の影響を強く受けます。そして、度重なる空襲。
昼夜を問わない攻撃に会い、人々は、次第に疲弊して行くのです。
最後ラストの結末
6月22日に、晴美を連れて径子とすずが下関へ行きます。
そこで空襲に見舞われてしまい、近くの防空壕へ避難します。激しい爆撃が去り、防空壕から出た2人の横で不発弾が爆発し、晴美は亡くなり、すずも右手を失ってしまいます。
7月21日にも夜襲があって、呉の町は火の海と化します。
夫の無事に安堵したすずですが、誰もが良かったと口にすることに憤懣を抱きます。
失って戻らない右手と晴美を思うとやるせないのでした。
7月28日、戦闘機からの攻撃に晒されたすずを周作は救います。しかし、すずは広島へ帰ることを言って周作は激怒します。
8月6日、彼女は病院の予約があったので、広島に帰る予定を変更していました。
荷物の整理をしているとき、空が一瞬光り、次の瞬間に地面が揺れ、外へ出てみると、広島方面に巨大なキノコ雲が立っていたのでした。
8月15日。終戦の玉音放送の夜、サンが隠し持っていた白米で夕食を迎えます。
空襲に脅かされない食卓は幸せでした。
10月6日に米軍が上陸します。周作は日本海軍解体の仕事に出かけますが、すずは右手がないことに、気落ちします。
昭和21年1月に妹の見舞いに広島へ向かいます。そこで家族の最期を聞き、妹は核の後遺症で寝ていました。
帰りに周作と偶然会い、幼少期に、彼と初めて出会った橋へ行きます。
日が暮れて、駅で列車を待つとき、戦災孤児の女の子がすずに懐いてしまい、夫婦は女の子を連れて帰ることにします。
そして、北條家では家族が助け合ってきたため、戦災孤児の少女も笑って受け入れてくれるのでした。
原爆投下の直接描写はない
実は、作品冒頭から、字幕で今が何年の何月何日なのかが繰り返し示されます。それが、とても印象的で、原爆投下の8月6日に近づくにつれて、胸が締め付けられるような気がします。
しかし、映画の中でそのシーンが直接描かれることはないのです。
戦時下の様子はしばしば登場して、日常の中に戦争があるということはわかるのですが、声高に何かを叫ぶということはありませんでした。
この世界の片隅にのキャラと声優
すずとのん
主人公の北条すず担当の声優は、NHK朝ドラ「あまちゃん」で有名な女優のんです。
第38回ヨコハマ映画祭作品賞受賞の時、片渕監督はどうしてのんをキャスティングしたかの質問に「だって他にいないじゃないですか。」と答えるほど絶賛しています。
そして、すずさん=のんさんのスタンスできちんと演じてくれたことを感謝されています。のん自身も北条すずはどんな人物であったかを理解し、アフレコにはかなり集中しました。
映画の中ですずさんが節約したり、工夫しているのを見て、のん自身もごはんを作ったり洗濯をしたりと規則正しくきちんと生活をすることが楽しくなったそうです。
Amazonプライム無料お試し登録この世界の片隅にの原作漫画
戦争と広島
原作漫画は、著者こうの史代、2006年から2009年の間、㈱双葉社出版の漫画雑誌『漫画アクション』に掲載されました。
2004年作『夕凪の街 桜の国』とともに戦争と広島をテーマに描いた作品です。
単行本「この世界の片隅に」後篇の最後には、多くの参考文献、お世話になった主な施設、お世話になった方々が記されており、作者が漫画を描くにあたり綿密に下調べを行い、丁寧に描いていることが分かります。
そのことから、これは実話だったんじゃないか、と思う人が後を絶たなかった、という話です。実際は、実話ではないそうですが、ほぼ、実話だと言っても何も違和感がありませんね。
また、あとがきには、呉市は母の故郷でることを述べています。
そして、自らの経験がなく、死の悲劇の本当の重さを量れないことから、この作品で戦時の生活を淡々と描くことにしたと告白しています。
そしていくつもあった誰かの生の悲しみやきらめきを知ってほしいとの思いが込められています。
この世界の片隅にの聖地巡礼
過去と現代
この映画のロケ地となった場所は、広島県広島市と呉市です。
映画のヒットにより、多くの人たちが、広島市や呉市に訪れています。
片渕映画監督が、「全国の人に広島と軍港として栄えた呉を知ってほしい。」という願いをもとに、ロケ地マップを作成しました。
登場人物のイラストとともに、すずの嫁ぎ先の呉市、実家のある江波、広島市内の廣島と中島本町の地図が描かれており、それぞれの映画の場面も記されています。
また呉市では、2019年7月20日~2020年2月16日まで「この世界の片隅に」スタンプラリーを行いました。
鶴岡一人記念スポーツ会館→呉市立美術館→千福ギャラリー三宅屋商店→大和ミュージアム→街かど市民ギャラリー90(くれ)→くれ観光情報プラザの順でゆかりのスポットを巡る聖地巡礼となっています。
映画の舞台をめぐることによって、過去に起こったこと、そして過去と現代がつながっていることを実感できるのだと思います。