一銭洋食が地方で定着した三津浜焼き
この話を聞いて、たこ焼きボーイは日本の食文化の素晴らしさに感動しました。
大正時代の頃の話です。
小麦粉を水で溶いてそれを鉄板で焼き、刻みネギなど乗せて、ソースをかけて出していました。その名前は「一銭洋食」です。
実は、その当時ではソースさえかければ、なんでも洋食と見ていた風潮があったようです。この食べ物は手軽で、庶民の味として浸透して行きました。
戦後になって、愛媛県松山の三津という港町ではこの一銭洋食を単に「洋食」と呼んで、女性たちが、店舗の軒下などで作っていたそうです。
その上に乗せる具材は千切りキャベツや魚粉、卵、天かすといったもので、店によって様々だったようです。
天かすを用いた理由は、安くて美味いというのが売りだったので、豪華な食材は使えず、その代わりに天かすを使っていたということです。
また、肉を使うときは、牛肉が普通だったようです。また、焼き方も、大阪のお好み焼きのような混ぜ焼きでなく、広島と同じ乗せ焼きのスタイルだったんですね。
これは、乗せ焼きの方が歴史的にも自然な作り方だったように思います。
B級グルメで有名に
三津浜焼きは、B級グルメとしてもとっても有名ですが、今回は「全国ご当地こなもんサミット2020in三津浜」が2月15日に、松山市で行われたんです。
「三津浜焼き」を始め、宮城県の「石巻焼そば」、静岡県の「浜松餃子」、大阪府の「大阪道頓堀たこ焼き」といった11道府県からの出品があったそうです。
二つ折りにするわけ
一銭洋食の時から、ボリュームを出すために二つ折りにしたといわれています。
さらに、持ち帰る時に、二つ折りにした方が容器に入りやすいので、それが定着したとも言われています。
三津浜焼きも、店で鉄板の上でそのまま食べるときは丸いまま出すこともあるようですが、持ち帰るときは必ず二つ折りになっているそうです。
広島焼きとの繋がりと違い
大正の頃、全国的に「一銭洋食」は広まっていたので、広島、三津それぞれに伝わっていったのは当然なんですね。
では、広島と三津のお好み焼きは何が違うのでしょうか?
実は焼き方や具材に違いがあります。クレープのように生地を伸ばして焼いたものにうどんやそばを入れたものを台付きと呼ぶそうです。
それぞれの店が、この台に使う小麦粉を数種類ブレンドして、ダシにもこだわって配合をしています。
広島の場合、生地の上にはキャベツや具材等が先に乗ります。そこには味付けはありません。そのあと、麺を載せます。
しかし、三津浜では生地にも味がつき、鉄板で焼いたあと、上にソースや胡椒で味付けをした中華そばやうどんが乗ります。そのため、三津浜焼きでは麺が入っているものを台付きと呼ぶのです。
またうどんやそばにもあらかじめソースや胡椒で味付けをしてから台と合わせるのも「広島風お好み焼き」とは異なる点です。
そのように、多くの人に愛されてきたお好み焼きを「三津浜焼き」と名付けて、ブランド化して、県内外へ発信しようという思いが生まれたそうです。
たくさんの人たちに三津へ来てもらい、「三津浜焼き」を食べていただいて、三津の歴史や文化に触れてもらおうというものです。
牛脂が生み出す三津浜焼き独特の風味
三津浜焼の特徴として、台を焼いて、その上に野菜をたっぷりとのせたら、その上から牛脂をのせるというのがあります。
三津浜焼きは両面ともしっかりと焼くので、牛脂は溶けて、甘みとコクが台にしっかりとしみ込んで、味わいを深くします。
作られた当時は庶民の食べ物だったので、高価な牛肉は使えませんでした。
その時に、苦肉の策として、牛脂を使って味を出したのですが、今ではそれがスタンダードになっています。
また、港町ということもあって、魚介類が豊富なので、その魚介類を使った練り物を、三津浜焼きにも輪切りにしたり、みじん切りにしたちくわを使います。
焼き上げると、程よい弾力とダシが出てきて深みのある味わいになっていくので、現在ではどこの店でも必ず入れています。