映画『いまを生きる』(原題: Dead Poets Society)は、1989年にアメリカで公開されたヒューマンドラマ作品です。
ピーター・ウィアーが監督を務め、第62回アカデミー賞にて脚本賞を受賞しました。
ナンシー・H・クラインバウムによる小説も出版されています。
この原題の「Dead Poets Society(死せる詩人の会)」というのは教師ジョン・キーティングがウェルトン校在学中に結成していた読詩サークルの名前出そうです。
邦題の「いまを生きる」は劇中でキーティングが発するラテン語「Carpe Diem」の和訳になっていて、厳密には「いまを生きろ」「いまを掴め」といった意味になるんだとか。
とても悲しく、胸が痛くなる映画ですが、考えさせられる作品です。
今を生きる、映画のあらすじとラストの結末
人生の素晴らしさを説いていたはずなのに
1959年、バーモントにある全寮制の名門進学校に、英語教師ジョン・キーティングがやってきました。
生徒たちに教科書を破らせる、などの破天荒な授業を通して、詩の美しさや人生の素晴らしさを説くキーティングの魅力に生徒たちは惹かれていきます。
そこで生徒のニール・ペリーは、キーティングがかつて学生だった頃に作っていた「死せる詩人の会」という同好会を復活させようと、友人達に提案します。
友人達は皆、賛同してくれました。こっそり学校を抜け出して、洞窟で集まり詩を詠み、楽しい時間を過ごしました。
詩の世界や演技の世界に没頭し、友人達と充実した日々を送るニールでしたが、ある問題を抱えていました。
芝居や役者に興味があったニールでしたが、父の反対でその夢を諦めていたのです。
しかし、芝居のオーディションを受けて、見事、主人公の座を勝ち取ります。
ところが、ニールが劇団に入団をした事を知った父親は、舞台初日の前夜にもかかわらず劇団を辞めさせようとします。
ニールの父親は、反対したはずの舞台に息子が出演する事を知って、劇場にきます。ニールは役のセリフを通じて、舞台上から自分の思いを伝えようとします。
しかし、ニールの思いは父親に届かず、舞台終了後、家に連れ戻されてしまい、さらに、陸軍学校へ転校して、「将来は医者になれ!」と、父親に命令をされてしまいます。
苦悩の末、ニールは、自宅にあった拳銃で自殺をしてしまうのです。
ニールの父親は、息子が自殺をした原因と責任は、すべて学校だと言ってきます。さらに、学校も、キーティングが扇動したとすべての責任があると決めつけるのです。
学校は、『死せる詩人の会』のメンバーたちに、退学処分をちらつかせ、自殺の原因がキーディングという書面にサインさせられます。
そして、キーディングが学校を去る日、生徒達は、英語の授業のなかで、ついに自分たちの本当の思いを表明します。
キーディングは、教えたことが伝わっていることを悟り、嬉しそうに微笑みながら教室を去っていくのでした。
キャストと見どころ
ロビン・ウィリアムズ
生年月日:1951年7月21日
出身地:アメリカ/イリノイ州シカゴ
教師のジョン・キーティング役を演じたのは、ロビン・ウィリアムズです。
父はフォード社の重役でした。幼い頃はデトロイトで暮らし、やがてサンフランシスコに移住し、クレモント・カレッジに入学しました。
「ハッピー・デイズ」の1エピソードで演じたオーク星の宇宙人役で注目され、TVシリーズ「Mork and Mindy」がスタートしました。
彼はドラッグに溺れていましたが、84年「ハドソン河のモスコー」で注目され始めたタイミングでドラッグを止め、スタンダップ・コメディアンとして全米ツアーを敢行しました。
その後、87年「グッドモーニング,ベトナム」でアカデミー主演賞に初ノミネートされました。以降、コメディアンとして多くの作品に主演する傍ら、ドラマでも高い演技の才能を発揮しています。
89年には本作品、「いまを生きる」と91年「フィッシャー・キング」でも同賞にノミネートされました。
そして97年の「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」で、ついにオスカー助演男優賞を受賞しました。
他にも「レナードの朝」「ミセス・ダウト」「パッチ・アダムス」などに出演し、作品ごとに印象的な演技が話題になりました。
私生活では、プロデューサーのマーシャ・ガーセス・ウィリアムズをはじめ3度の結婚歴があり、3人の子供がいました。
14年8月、サンフランシスコ近郊の自宅にて、首を吊った状態で発見されました。自殺と見られています。
以前からうつ病であり、初期のパーキンソン病も患っていました。
とても味のある魅力的な俳優さんだったのに、とても残念ですね。
まさか、本作品のニールのように自殺してしまうとは、驚きです
ロバート・ショーン・レナード
生年月日:1969年2月28日
出身地:アメリカ/ニュージャージー州
父親はスペイン語教師、母親は看護婦でした。フォーダム大学で学んだ後、コロンビア大学に移りました。
15歳で舞台デビューして以来、舞台で活躍していました。 2001年にはトム・ストッパードの舞台「The Invention of Love」でトニー賞を受賞しました。
83年、オフ・ブロードウェイを経て数々の舞台を経験しました。映画では89年の「いまを生きる」で見せた演技が注目を受け、以降、様々な作品に出演しています。
本作品では、生き生きとした夢のある青年役を見事に演じていました。親との意見の食い違いから、命を自ら落としてしまうという役どころは本人も辛かったのではないでしょうか。
見どころ
最後、キーティングが教室を去るシーンはとても感動しました。
生徒達が皆、キーティングに教わった通りに、机の上に立ってキーティングを見送ったのです。
そんなことをしたら処罰を受けるかもしれないのに、リスクを負ってでも、ちゃんと見送ろうとしたのですね。
「先生は何も悪くない。」とみんなわかっているし、先生に感謝しているという気持ちがとても伝わってきて、生徒達の姿や、キーディングの嬉しそうな表情には、涙が溢れました。
感想と評価
せいつなさが残る
とても悲しく、胸が痛くなる映画でした。とても楽しい学校生活に、微笑ましくなり温かい気持ちで見ていましたが、最後ニールが親に夢を反対されたことで自殺してしまい、とてもショックでした。
そしてその後、腑に落ちなかったのが、キーティングは何も悪くないのに、学校を辞めさせられてしまうことです。完全に濡れ衣ですね。
どう考えても、ちゃんと話し合わなかった親の責任だなと思いました。親の人生ではなく、ニールの人生なのですから、もっと彼の意見を聞いてあげるべきでした。
これは映画ですが、実際こういったことはよくあるんだろうなと思います。自殺する人がいなくなるような、もっと自由で平和な社会になるといいですね。
一人一人が思いやりを持ち、身近な人が苦しんでいたら助けてあげるようにすれば、世界は変わっていくと思います。